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「地球環境科学と私」第五十一回

2025.1.15

「地球環境科学と私」第五十一回は地球惑星物理学講座 伊藤 蔵人さんによる 地球惑星科学と直観 です.


地球惑星科学と直観 地球惑星物理学講座 伊藤 蔵人

地球惑星物理学講座M1の伊藤です。今は惑星形成論、ダストを効率的に集めて微惑星を形成する理論を研究しています。手短に自己紹介と惑星科学にかかわるようになった経緯を説明したいと思います。


私は高知出身で自然が豊かと形容される典型的な田舎育ちです。そんなところでは虫を捕まえたり、野菜を育てたりで自然と関わることがごく当たり前で、そうした世界で私の中の当たり前が作られていきました。山や川でサバイバルすることもしばしばあり、生存本能が研ぎ澄まされ、直観的に危機を察知するようになりました。高知は自然豊か。当然の結果として自然災害も多彩です。後に考えれば、地球科学に落ち着いたのは周りの環境が大きかったと思います。


さて、ではなぜ地球ではなく、惑星なのかといえば、これまた子供のころから宇宙に興味があったからです。超新星爆発やガンマ線バーストといった宇宙の現象はその規模もエネルギーも地球のそれとは桁違いでおっきいもの好きの子供心がくすぐられてました。惑星以外にも先ほど挙げた自然に直結する植物や気象、また、派生的に地理や歴史、文化にも興味があり、知識の風呂敷を広げていった中で惑星の理論研究を直観的に選択した形です。


私の研究について簡単に説明します。原始惑星系円盤はダストとガスが円盤状に回転しています。ダストは中心星からの重力と釣り合う遠心力を生み出す回転速度の一方、ガスは中心星からの重力分から中心星付近ほどガスが濃いというガス分布の偏りによる気圧傾度力を差し引いた遠心力で回転するため、ダストはガスよりも速い速度で回転し、ガス抵抗を受けることになります。その結果、ダストは回転速度を失い、中心星へと落下していきます。この落下はダストが1 mサイズに成長したとき最大になり、この場合太陽から地球までの距離の地点で100年でダストは落下してしまい、惑星が形成できない可能性があります。しかし、もしガス分布に山があれば気圧傾度力は内向きになるため、ダストはガスから追い風を受けて外側移動します。このとき、ガスの山の頂上にダストが集まることになり、惑星が形成される可能性があることが昔から言われています(図参照)。私は揮発性ガスの水蒸気、アンモニア、硫化水素の凝結がガスの山を作り出すことをシミュレーションで示しました。


ここまで簡単に私が惑星科学に興味をもち、研究をするに至った経緯について簡単に紹介しました。最後に地球惑星科学の魅力について、私なりの考えとともに紹介していきたいと思います。


社会が激変する時代になったと言われ始めて久しい今、「普通」だとか「常識」とかに押し付けていた倫理が「多様性」という言葉で封じ込められ、極めて漠然として形容しがたいものに成り下がっています。そこで今は大人も子供も合理的や効率的、論理的のような言葉に裏付けられた確かさによりどころを見つけようと躍起になっているように見受けられます。しかしそれでもなおどこか心の中でモヤモヤとした感情が消えることなく、現実を我慢して呑む日々のことだと思います。その理由の一つに、論理的であることや、合理的かどうかというのは結局人が決めているということにあると私は考えています。そうした理論に基づく知識はすべて意図的な選別行為の結果ということです。例えば研究においても問題提示、解決の際にまず先にあるのが他でもないその人の選別が介入してきます。つまり、「常識」を肩代わりしようと頑張っている知識や理論は後に装飾されたもので如何様にも味変可能です。そのため、各個人の中で「論理」がそれぞれで味付けされ、他人の「論理」を聞くと不味く感じるようになるんだと思います。では「常識」と思っているものはというと、その骨格は私自身の世界観に基づく直観です。


世界観は私の信条とも強く結びつき、変えることは難しいです。が、異なる世界観を持つ人との交流でその世界観を豊にすることは可能です。それができるのは一つは国際交流であり、もう一つは他分野の人との議論です。地学は地球に纏わる様々な分野の人同士の議論が出来る貴重な学問で、その議論の中で不味い「理論」を消化していく中で私を磨き上げ正しい方向を選択する力を身につけられるようになると思います。


地球環境科学専攻

横軸が中心星からの距離r、縦軸がガス圧の分布図。ガス分布は負の傾きで、ダストはガスから向かい風を受け中心星へと落下する。ガス分布に山があるとき、ダストは外側移動し、ガスの山の頂上付近にダストが集まる。ここで微惑星が出来る可能性がある。





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