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「地球環境科学と私」第二十七回

2021.3.1

「地球環境科学と私」第二十七回は地球史学講座 大路 樹生さんによる 大学を取り巻く「環境変動」 です.


大学を取り巻く「環境変動」  地球史学講座 大路 樹生  

このコーナーの執筆を依頼された。本来私の専門とする、過去の生命とその進化に関することを中心に執筆するのが通常なのだと思うのだが、自由に執筆することが許されているようなので、以下には私が最近感じている、「大学を取り巻く環境の変化」について記すことにする。


名古屋大学が掲げる学術憲章は「勇気ある知識人」である。この言葉をどのように解釈するかについては色々意見があるだろう。しかし我々大学人として最も大事にすべきは、「研究」と「教育」であるということについては皆頷くだろう。そして「研究」と「教育」をできうる限り追及していく上で、言うべきことは言う、おかしいと思ったときは疑問を呈する、という態度は「勇気ある知識人」として必要なことだろう。


一方我々を取り巻く研究・教育環境はとても急速に変化している。この変化は特に国立大学が法人化して以降、加速度的に進行しているように思われる。そして大学の教員は忙しくなる一方である。この忙しさが、本当に「研究」と「教育」のためになっていればよいのだが、そうばかりとは言えない。研究に割く時間はますます減少し、毎日多量のメールを見逃すことなく注意する必要に迫られている。教育に関しても多くのガイドラインが設定され、本当に学生のためになっているのか思われるものも多く見られるようになった。このような動きがあるときに、教員は声を上げてきただろうか。体裁を重んじるばかり、その本質を忘れていないだろうか。


ここで私の研究する過去の生命史を顧みてみよう。多くの時代で比較的安定した時間が長く続く傾向があるが、時に急速で大規模な環境変化が起こり、当時生息していた生物に大量絶滅をもたらしている。生態系の崩壊を招くのである。では急速な変化を経験している大学にいる我々は、近々大量絶滅を目にするのだろうか。また過去の生物はどのように環境変遷や大量絶滅を乗り越えてきたのだろうか。


それには生物自体の多様性が非常に重要である。均一な構成の生態系はある環境には最適にふるまうことができるかもしれないが、ちょっとした環境変動があるだけで、大きなダメージを被る。逆に生態系を構成する生物が多様であれば、全体としてそのような変動に耐えることができる。


現在の大学環境は均一化が進んでいるように思われる。多様性を重んじない傾向である。これは今後の変化に対応する柔軟性を奪い、大学自体が弱体化する危険性がある。我々は個人個人の独自性を重んじ、多様な構成を排除するのではなく受け止めていくことが大切だろう。


私が名古屋大学に在籍するのも後1年となった。自ら「勇気ある知識人」足るべく「研究」と「教育」を優先し、本当に必要な行動を取るべく戒めていこうと思う。





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